泣いていますが、おかまいなく。(最近の読み物:頂きもの編)

ある日急に小説が読みたくなって、ネイティブ・アメリカンの少年の話『リトル・トリー』を本棚から選び出した。
この本はずいぶん前(たぶん中学生のころ)に、叔母からもらった児童書。(良書を選んでは年齢に合わせてプレゼントしてもらっていたのに、何十年も読まずにおいてしまった。)晴雨堂で読むから、あまりややこしく込み入っていないものがよいと思ったのだ。

この日予約が入らず十分に時間があったので、結局、どっぷりと一冊読み切った。

終盤では、遠慮なく泣いておいた。
「今患者さんが入ってきたら、何事かと思うだろうなあ。」と思ってすこし笑ってしまう。(結局誰にも見られなかったけど。)

少年期のまっすぐなまなざし、まっすぐな勇気ややさしさが書かれたような話に、私はめっぽう弱い。自分のパーソナリティの大部分は、案外このくらいの年齢のままなのかもしれない。

この本とは全然関係ないけれど、もともと好きな言葉がある。

「まず、暗闇にひとりたたずむ孤児の口ずさむ歌のことを」

この言葉は、ジョン・ケージだったかフェリックス・ガタリだったか、ある本の中に出てくる言葉とのことで、別の著者の本のなかに引用されていた。ひとり口ずさむ歌とそのリズムの力で、暗闇・・・何も見えない無秩序に見えるところにも「生きたテリトリー」を創り出すことができるのだ、というようなくだりだった。

この部分だけ取り出してみたところで、意味も理路も全然伝わらないとは思うのですが、個人的にこの言葉と続く一連の文章に支えられてきた。ずっと大切に覚えていて、折につけ、思い出される言葉のひとつである。

落ち込んだときには、この言葉をひとりで唱えてみることもある。笑
私には、ささやかながら、お守りのような効果を持ち続けている言葉だ。

『リトル・トリ―』、この話はまさに「暗闇にひとりたたずむ孤児の、口ずさむ歌」そのものかもしれない。

ときに涙がこぼれるけれど、勇気をもって生き抜く、その力をくれるような本。


リトル・トリー

リトル・トリー