街と出会うということ

代々木八幡の街に初めて来たのは、今年の4月29日の祝日。
その日は入っていた用事が急になくなって、久しぶりにぽっかりと予定があいた。
独立開業を、ほんの少し考え始めたときだった。

でもまず何をしたらいいのか、まったくわからない。
1年後ぐらいに実現するといいね、まずどんな街に治療院を開くかをイメージしてみようかということになって、候補に上った小田急線沿いのいくつかの駅に降りてみることにした。
そのときにたまたま最初に選んだ駅が、代々木八幡だった。

まずひとつ目の駅でランチでも食べよう、と昼前に駅に着いた。
商店街につづく地続きの改札を出て、のんびりとした歩道を歩きだしてすぐに、なぜだかわからないけれどはっきりと、
「この街をとてもとても好き」だと思った。
そして理由はないけれど、「この街も、自分たちのことを好きみたいだ」と感じた。
「この街にいることが、自分の日常になってほしい!」と、そのとき強く思ってしまった。
つねづね、本当にそうなってほしいことしか願わないことにしているので、
とっさであったけれども、この願いはけっこう本気の願いだったと言っていい。
そんなことを思いながら歩いていたら、どこからかすごくいい風が吹いていて、おのずと呼吸が深くなり、何か遠くから、とてもいい音みたいなものが聴こえてくるような気がした。


その日はそのあと、下北沢や経堂に行って、同じように街の様子を見てまわったのだけれど、八幡で感じたようなわくわくした感じはどの街でも感じなかった。
(下北沢とか好きなのになあ。)
帰り際、なんとなくもう一度代々木八幡の街を見たくなり、再び八幡の駅に降りて、ごあいさつのつもりで、駅の後ろにある八幡宮にお参りに行った。
「今後のご縁を占うぜっ」と言いながら気合を込めて引いたおみくじは、「大吉」だった。
願い事の項には 「すべて叶う。早くて吉。」 とある。
すべて叶う?早くて吉?!思わず大笑いしながら、そのおみくじを大切に持って帰った。

それからちょうど3か月後の7月30日。
治療院は「晴雨堂」と名付けられ、代々木八幡にてオープンすることになる。
誰よりも自分たちが一番、この急展開に驚いた。
生まれて初めて経験することばかりでなかなか大変だったけれど、たくさんの方から手助けや励まし、応援をいただいたし、たくさんの不思議な追い風も吹いて、今思い出してもとても面白い流れのなかにあったと思う。


オープンから3か月が経ちました。この街と出会ってからは6か月。
おかげさまで、晴雨堂はすっかり街になじみ、今日もとても穏やかです。