かたつむりの速さで
読んでいた小説のなかに、「かたつむりの速さ」という表現が出てきて嬉しくなった。
「なるべくそっとしよう。そっと。かたつむりくらいの速さで。そうしたら、人生も長くなるから、長くいっしょにいられるし。」
宮坂さんは言った。
あまりにほのぼのして、私はただにっこりと笑った。携帯電話の絵文字くらいに小さなにっこりだった。
「かたつむりくらいの速さ」 っていいな。
「そうしたら、人生も長くなるから」 って、そうなのか?(笑)。
久しぶりに、よしもとばなな氏の小説を立て続けに2冊読んだ。これはそのうちの一冊、『ジュージュー』の中のセリフ。
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/07/15
- メディア: 単行本
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小説自体、いや本自体を、久しぶりに読んだ気がする。
先日ふと、昔から好きな彼女の最近の作品を、その中でもなにか未読の作品を読みたいと思って図書館の蔵書検索をしてみたら、新しい本の何冊かはすぐに取り寄せられる状態だった。
私にとって「新しい」本は、世の中的にはもうすっかり新刊じゃなくなっているらしかった。
(人気作家の新刊は、50人とか100人とか貸出し待ちの人がいるのです。)
・・・ラッキー!(笑)
それでさっそく、よしもとばなな氏の小説を2冊、対談本を1冊、それから村上春樹氏のインタビュー本を1冊(これも誰も予約をしていなかったよ)、最寄りの図書館に取り寄せて借りた。
この『ジュージュー』も、もう一冊の小説も、とてもとてもすばらしかった。
ちなみに上記の「かたつむりの速さ」うんぬんという箇所は、とくにそのすばらしさを表しているというようなところでは全然ないのだけれど、なんだか好きで抜粋してしまった。
かたつむりは自分の中でけっこう重要なメタファーだと思う。
静かなところでしか、その完全な姿をあらわにしないかたつむり。
人の身体や心が「かたつむりのようでいられること」―平たく言えば
「安心して、無防備なありのままの姿で、ありのままの自分の速度で進めること」
がとても大切だと思っているからだ。
それが無理なくできるような自分であるか、
あるいはそれができるような場所を持っているか。
いろんなものがファストでクイックな世の中だけど(その恩恵にどっぷりつかっているけれど)
「マイペース」は大切。
それがスローであれ、ファストであれ。
そうか、「かたつむりの速さ」というのは、私にとっては単に「スロー」という意味ではなく、
「マイペース」ということなんだな。
そしてじつのところ「スロー」という言葉も、「ゆっくり」とういう意味だけにはとどまらない気がするのだけれど、それはまた別の本のお話。
今日のところは、ここまで。
そう、かたつむりの速さで。
今日も、かたつむりの速さで。